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2017/09/26

シリーズドイツ連邦議会総選挙2017 Part 4 - 総選挙の結果おさらいと今後の注目点!

2017年10月22日に行われる見通しの衆議院議員総選挙を前に、ドイツ政治一大イベントにも注目していたタケオです。

2017年9月24日にドイツ連邦議会総選挙の投票が行われました!

日本の報道でもニュースになっていますが、自分でもドイツ政治の勉強の意味も込めて、今回の総選挙結果のおさらいを、そして今後の注目点等について書きたいと思います

目次
1. ドイツ連邦議会総選挙の政党別結果
2. ドイツ連邦議会総選挙結果を受けての各政党の反応
3. ドイツ連邦議会総選挙後の注目点
4. 終わりに



ドイツ連邦議会総選挙の政党別結果


ドイツ連邦議会総選挙での第二投票 (Zweitstimme、日本でいう比例票得票率に相当) 得票率及び議席数(今回の全議席数は709)を政党別に紹介します。


ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)・バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU) 連合 (Union)

第二投票得票率:33.0%(前回比-8.5%)
獲得議席数:246(前回比-65議席

ドイツを構成する16の連邦州の内14州で第二投票得票率1位と多くの支持を獲得し、議会第一党の座は守ったものの、前回総選挙と比較すると大きく議席数を減らす結果となりました。

主な支持層としては、高学歴者・年金生活者となっています。


ドイツ社会民主党 (SPD)

第二投票得票率:20.5%(前回比-12.5%)
獲得議席数:153(前回比-40議席

前回と同様ブレーメン市で第二投票得票率1位を獲得したものの、全国規模での第二投票得票率は10%以上の大幅減となり、第二次世界大戦後では最悪の結果となりました。

主な支持層としては、労働者・年金生活者・失業者です。


ドイツのための選択肢 (AfD)

第二投票得票率:12.6%(前回比+7.9%)
獲得議席数:94

議会進出条件の第二得票率5%をクリアして結党以来初の議席を果たしただけでなく、他の少数政党を押しのけて議会第三党となりました。

ザクセン州 (Sachsen) においては小選挙区で3議席を獲得し、第二投票得票率でも1位となりました。


主な支持層としては、労働者・失業者・30~40代・旧東ドイツ地域住民です。


自由民主党 (FDP)

第二投票得票率:10.7%(前回比+5.9%)
獲得議席数:80


小選挙区では1つも議席を獲得出来ませんでしたが、議会進出条件の第二得票率5%を上回り、前回総選挙で議席獲得を果たせなかった悔しさを晴らして議席回復を果たしました。

自営業者からの支持を比較的多く集めました。


左翼党 (Die Linke)

第二投票得票率:9.2%(前回比+0.6%)
獲得議席数:69(前回比+5議席


前回総選挙での得票率をほぼ維持して、議席保持に成功しました。

小選挙区でも旧東ベルリン地区 (Ost-Berlin) で4つ、ザクセン州で1つ勝利を果たす等、旧東ドイツ地域からの支持を比較的多く集めました。


同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grünen)

第二投票得票率:8.9%(前回比+0.5%)
獲得議席数:67(前回比+4議席


左翼党と同様、前回総選挙での得票率をほぼ維持した結果となりました。


小選挙区は前回と同様ベルリン市 (Berlin) で1つ獲得しています。

高学歴者・25歳以下の若い世代・自営業者から多くの票を得ました。


参考リンク
ドイツ連邦議会総選挙の結果|ドイツ選挙管理委員会(ドイツ語)
ドイツ連邦議会総選挙特設ページ|ARD(ドイツ語)



ドイツ連邦議会総選挙結果を受けての各政党の反応


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

首相でありドイツキリスト教民主同盟党首でもあるアンゲラ・メルケル氏 (Angela Merkel) は議会第一党の座を維持したことに対して支持者に感謝の意を示しました。

そして、「これから私たちの前には政党「ドイツのための選択肢」の議会進出という大きなチャレンジが待っている」とした上で次のように述べました。


Wir wollen die Wählerinnen und Wähler der AfD zurückgewinnen durch Lösung vom Problem, durch Aufnehmen ihrer Sorgen, ihrer Ängste zum Teil.ドイツのための選択肢を選んだ有権者に対し、問題解決・不安や不満に対する理解を通じて信頼を取り戻したいと思います。




アンゲラ・メルケル首相、ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教民主同盟連合ドイツ連邦議会総選挙の勝利宣言会見(2017年9月24日)


ドイツ社会民主党

欧州委員会議長からドイツ社会民主党党首に転じるも、議席を大幅に減らしてしまったマルティン・シュルツ氏は、今回総選挙の結果について、「大きな敗北」と認めました。

しかし、これまで連立政権、所謂「大連立」を組んできたドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合との対決姿勢を改めて明確にした上で次のように述べました。


Wir werden sehen, welche Regierung zustande kommt.Wir werden der Regierung in konstruktiver Form als Opposition entgegentreten.どのような政権が誕生するか見極めた上で、その政権に建設的な形で野党として立ち向かう決意であります。





シュルツ氏、ドイツ社会民主党歴史的惨敗を受けての演説(2017年9月25日)


ドイツのための選択肢 (AfD)

アリス・ワイデル代表候補者は、初の議会進出確実を受けての支持者を前にした演説で、ドイツのための選択肢の議会でまず初めに取り組むこととして、アンゲラ・メルケル首相を、政権運営での失政を問う審査委員会 (Untersuchungausschuss) にかけることを支持者に約束しました。




ドイツのための選択肢支持者の前でのアリス・ワイデル氏演説(2017年9月24日)


自由民主党 (FDP)

議席回復を果たした自由民主党党首のクリスティアン・リントナー氏 (Christian Lindner) は、支持者に感謝の意を示した上で、次のように議会再進出への決意を述べました。


Nach einem Scheitern ist ein neuer Anfang möglich.挫折の後に新たな始まりがあります。




自由民主党支持者を前にしたクリスティアン・リントナー氏の演説(2017年9月24日)


左翼党

左翼党代表候補者のザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏 (Sahra Wagenknecht) は、「最大の心配事は「ドイツのための選択肢」の議会進出」とし、対極に立つドイツのための選択肢を批判した上で、次のように支持者の前で宣言を行いました。


Wir werden der soziale Oppositionsführer bleiben!社会主義野党の先頭に立ち続けます!




左翼党支持者を前にしたザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏の演説(2017年9月24日)


同盟90/緑の党

ドイツ連邦議会での議席を保持した同盟90/緑の党代表候補者であるカトリン・ゲーリング=エッカルト氏 (Katrin Göring-Eckardt) は、ドイツ連邦議会総選挙投票日の翌日、記者団を前に次のように述べて、ドイツのための選択肢の議会進出に対する民主主義への危機感を口にしました。


Es gibt erstmal die Aufgabe der Demokratin und Demokraten deutlich zu machen "Wir sind die große Mehrheit."民主主義の国に暮らす人にとって先ずはっきりさせるべきことは、「私たちは多くの票を勝ち取った」ということです。




同盟90/緑の党代表候補者カトリン・ゲーリング=エッカルト氏の記者団とのインタビュー(2017年9月25日)


ドイツ連邦議会総選挙後の注目点‐連立政権の組み合わせ


ドイツ連邦議会総選挙後の注目点としては、どのような連立政権が組まれるのか、ということです。

ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合が第一党となったものの、予算案や法律成立等議会をスムーズに運営するには、議席の過半数以上(355議席以上)となるような連立パートナーが必要になってきます。

先に書いたように、これまでいわゆる「大連立」を組んできたドイツ社会民主党については、現党首のマルティン・シュルツ氏が拒否の姿勢を見せているため、ドイツメディアの間では、自由民主党・同盟90/緑の党との連立が現実的との見方が多数となっています。

ちなみに、この3党の連立は、それぞれの党のイメージカラー(ドイツキリスト教民主同盟:黒、自由民主党:黄、同盟90/緑の党:緑)をとって、「ジャマイカ連立 (Jamaika Koalition) 」と呼ばれています。

しかし、この組み合わせでも、環境政策を中心に各政党間の立場の違いが大きく、連立交渉は困難を極めそうです。



終わりに‐メルケル首相はドイツのための選択肢投票者の信頼を取り戻せるのか?


今回のドイツ連邦議会総選挙結果で興味深かったのは、2つの巨大政党の減少分が、ドイツのための選択肢或いは自由民主党の増加分に繋がっているということです。

このことから、「大連立」の政策に失望したり不満を持ち始めたりした有権者が、前回の総選挙で議員を送り込めなかった、より保守傾向の強い政党に支持を変えた、という見方をすることが出来ると思います。

このことから、アンゲラ・メルケル首相も自身で述べていたように、ドイツキリスト教民主同盟にとっては、ドイツのための選択肢への投票に流れた有権者のことを理解し、信頼を取り戻せるか、が今後の重要なカギになって行くと思われます。

一方で、メルケル氏は現在63歳、次回2021年の総選挙では67歳となり、2005年以来12年間首相の座に就いているメルケル氏の有力な後継者が流石に現れないと、党の趨勢に関わって来る可能性があると思っています。

しかし、先の大戦での敗戦・東西分断を経験したドイツだからこそ生まれた「寛容精神」、昨今では難民の大量受け入れで話題となった「ウェルカム文化 (Wilkommenskultur) 」の精神は崩して欲しくないと願っています。

僕がベルリンに滞在していた2015年というのは正に難民の大量受け入れ時期と重なり、トップニュースは毎日難民関連という程、「難民」がキーワードになった社会状況でした。

そんな中で人道支援優先としたメルケル首相の難民受け入れの決断は、旧東ドイツで生まれ育ち、民主化運動に参加していたメルケル首相だからこそ出来たことだと感じていました。

不寛容な雰囲気がドイツだけでなく全世界中で蔓延している中で、難民及び移民のドイツ社会への溶け込み、また経済成長と福祉の充実の両立は非常に難しいですが、次回総選挙までの4年後にそれがどれだけドイツの中で進むのか、或いは後退するのか、ドイツ語学習者として注目して行きたいと思います!

2017/09/19

台湾・台北旅行 番外編-台北の交通系ICカードチャージ方法&地下鉄利用時に便利なアプリの紹介!

30歳で初めて台湾を旅行したタケオです。

台北中に張り巡らされている台北地下鉄(台北捷運)の路線網。

料金も安いので便利に使いこなしたいもの!

台北に数日間旅行する際は、乗車する度にきっぷを買うより、悠遊カード(悠遊卡)をはじめとした交通系ICカードを使う方が1回の乗車当たり料金が安くなるのですが、海外でちゃんとチャージできるか、不安に思いますよね?

そこで今回は、僕が2017年7月に初めて台北を旅行した時に撮った写真を通じて、交通系ICカードへのチャージ方法を、更には台北地下鉄利用時に便利なアプリを紹介したいと思います。




















劍潭駅の自動券売機でチャージ


桃園国際空港(桃園國際機場)到着後に悠遊カードを購入と同時にスタッフに300台湾ドル(約1,100円)をチャージしてもらったものの、桃園空港MRT(桃園機場捷運)の台北駅までの片道160台湾ドル(約600円)が影響して、1日目の終わり頃には既に残額が100台湾ドル(約370円)未満になってしまいました。

そこで、1日目最後の地下鉄利用の前に劍潭駅の自動券売機で悠遊カードにチャージしてみることにしました。



士林市場の最寄り駅である劍潭駅



悠遊カードのチャージ方法


僕が桃園国際空港で購入していた交通ICカードの悠遊カード(悠遊卡)への100台湾ドル(約370円)にチャレンジ!

しかし、ここで朗報!

台北地下鉄の自動券売機は日本語対応でした!

日本人観光客が非常に多いというのはあると思いますが、海外の地で日本語対応があるととても嬉しいですよね!

ということで、想定していたよりも簡単にチャージすることが出来ました。

ここから写真を使ってチャージ方法を紹介します。



1. 自動券売機の画面で、「日本語」にタッチし、画面表示を日本語に切り替え




2. 自動券売機の画面で「ICカードチャージ」をタッチ!


















3. 自動券売機右側にある「IC卡加値平台」と表示されている台の上に交通ICカードを載せる






4. 自動券売機右側の硬貨口或いは紙幣口にお金を投入































5. 希望のお金を投入後、自動券売機の画面下方の「次へ」をタッチ






















6. めでたくチャージ完了、カードを手元に戻す。
「カードを取り戻してください」という、一見合っているようで変な日本語は気にしない!(苦笑)



















台北地下鉄利用時に便利なアプリ


更に、僕が台北での旅行で実際に使用した、台北地下鉄利用時に便利なアプリを紹介(画像が上手く出ていなくて申し訳ありません)。



台北捷運Go
台北捷運Go
無料
posted with アプリーチ



Go! Taipei Metro
Go! Taipei Metro
無料
posted with アプリーチ


台北地下鉄を運営する台北大衆捷運股份有限公司が提供しているアプリです。

中国語版(上)と英語版(下)が用意されていますが、日本語版がないのが残念なところ。

路線図の表示画面から、特定駅の情報、特定駅からの料金・目的駅までの所要時間、最短経路を検索できる、非常に便利なアプリです。

英語版「GO! Taipei Metro」アプリ使用方法を簡単に説明します。



1. 英語版「GO! Taipei Metro」アプリをタップすると、劍潭駅の写真が表示されますが、この画面のどこでも良いのでタッチすると。




2. 英語版「GO! Taipei Metro」アプリ上で台北地下鉄の路線図が表示されます。
ここから各駅の情報、特定駅から目的駅までの料金・所要時間等を調べることが出来ます。



3. 例えば、台北駅 (Taipei Main Station) をタッチしてから「IC Cards」をタッチすると、交通系ICカード利用時の目的駅までの料金が表示されます。



終わりに


如何でしたか。

僕が旅行した際には、操作を上手く行ったつもりでもチャージが完了しなかった時もありました。

しかし、多くの乗客が利用する大規模の駅や乗り換え駅では自動券売機が沢山ありますので、一度失敗しても他の自動券売機で上手く行く場合がありますので、トライしてみて下さい!

交通ICカードへのチャージが出来て、更に紹介したアプリを使えば、台北地下鉄を使いこなせること間違い無しです!



台北捷運公司公式ウェブサイト(英語版)


http://english.metro.taipei/
(日本語版はスマートフォン仕様のみ)

台北地下鉄での旅行に関しては、こちらの書籍もご参考に!

2017/09/17

シリーズドイツ連邦議会総選挙2017 Part 3 - 総選挙でのドイツ政党の公約比較、そして注目点についておさらい!

ドイツのアンゲラ・メルケル (Angela Merkel) 首相を直で拝見したことのあるタケオです。

2017年9月24日のドイツ連邦議会総選挙投票日まであと1週間です!

そこで今回はシリーズドイツ連邦議会総選挙2017 Part 2で紹介したドイツの政党の選挙公約、いわゆるマニフェストについて見ていきたいと思います。

比較対象の政党は以下の通りです。


ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)・バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU) 連合
ドイツ社会民主党 (SPD)
左翼党 (Die LINKE)
同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grüne)
自由民主党 (FDP)
ドイツのための選択肢 (AfD)


ドイツキリスト教民主同盟とバイエルン・キリスト教社会同盟はウニオン (Union) と呼ばれる連立を組んでいて、選挙公約も共同で作成しています。

そのため、ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)・バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU) 連合として一まとめで紹介します


参考リンク
全政党選挙公約(マニフェスト)一覧|バーデン=ヴュルテンベルク州政治教育センター(ドイツ語)


目次
1. 経済政策
2. IT政策
3. 労働政策
4. 教育・福祉政策
5. 環境問題対策
6. 難民・移民受け入れ政策
7. 内外政治政策
8. 終わりに‐ドイツ連邦議会総選挙の注目点



経済政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○電気車交通網 (Elektromobilität) ・自動運転車 (Automobil) 等、次世代自動車産業の発展加速
○道路・鉄道等インフラ整備の積極推進
○デジタル分野の小企業、いわゆる「スタートアップ (Start-up) 」企業創業者への公的支援
○2025年までに、国内総生産 (Bruttoinlandsproduct) の3.5%を研究費に


ドイツ社会民主党

○中小企業向けに、研究要員の社員を雇えるための「研究費ボーナス (Forschungsbonus) 」支給
○福祉関連職員の賃上げ
○電気車交通網の開発・発展への支援


左翼党

○ドイツ鉄道 (Deutsche Bahn) の再国有化
○自転車道 (Fahrradweg)・歩道 (Fußweg) 拡充
○社会福祉分野の財源として、年間収入100万ユーロ以上の人に対する「富裕税 (Vermögensteuer)」導入


同盟90/緑の党

○電気車交通網の開発・発展への支援
○中小企業向けに、研究要員の社員を雇えるための「研究費ボーナス」支給
○エネルギー転換・IT化分野で新たな雇用創出


自由民主党

○大麻 (Cannabis) 違法の中での乱用及び犯罪増加を止めるための、厳正な販売管理及び課税下での、成年への大麻販売許可
○民間の競争原理による電気自動車 (Elektroauto) 開発及び発展(特定の動力源の自動車を禁止せず)
○不動産取得税 (Grunderwerbsteuer) の最大50万ユーロ控除


ドイツのための選択肢

○相続税 (Erbschaftsteuer) 廃止
○「富裕税」導入反対


電気自動車の推進を図っているのが、ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合、ドイツ社会民主党、同盟90/緑の党、自由民主党。

左翼党は、公共交通機関若しくは自転車道・歩道の整備を強く謳っています。

ドイツ社会民主党と同盟90/緑の党は、電気自動車関連やいわゆる「研究費ボーナス」導入で政策が共通しています。

ユニークなのは、自由民主党の大麻合法化でしょうか。

ドイツのための選択肢は、特定の分野への開発投資ではなく、税負担軽減政策に重きを置いています。



IT政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○鉄道きっぷの電子化。
○グラスファイバーによる「5G」通信網の整備。
○「市民ポータル (Bürgerportal) 」を通じての各種公共手続き簡素化。
○大学を含めたドイツ全学校のインターネット連携


ドイツ社会民主党

○公共交通の電子ネットワーク化


左翼党

○各種学校において、無線LAN等通信網整備加速
○介護現場でのロボット導入反対


同盟90/緑の党

○農業分野のIT化「スマートファーミング (Smart Farming) 」推進


自由民主党

○IT教育機器購入費用として、高校生までの生徒に今後5年間で一人当たり計1,000ユーロ支給
○「デジタル省 (Digitalministerium) 」創設


ドイツのための選択肢

○ブロードバンド拡充



現与党であるドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合が新たな産業分野としてIT分野に注目し、様々な政策を打ち出すことを公約としています。

同じく経済重視の自由民主党も、「デジタル省」の創設という、他の政党と差別化を図っています。


労働政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○25~35歳で職業訓練 (Ausbildung) を修了していなくても働けるよう法整備。
○両親が失業している若者への経済支援。
○月最大450ユーロまでとなっているアルバイト (Minijob) の賃金の上方修正。
○2025年までに全ての業界の管理職の男女比率を1:1に。


ドイツ社会民主党

○大学教員の女性比率を最低40%に設定
○2025年までに会社役員の男女比率を1:1に
○失業後最大48ヶ月間受け取れる新たな失業手当 (Arbeitslosengeld) の新設 (Arbeitslosengeld Q)

※現失業手当については、下記の日本語資料が参考になりました。
基礎情報:ドイツ(2013年) 2. 雇用・失業対策|独立行政法人労働政策研究・研修機構


左翼党

○現在1時間当たり8.84ユーロの法的最低賃金 (Mindestlohn) を、12ユーロに引き上げ。

○正社員 (Festangestellte) の雇用促進
○派遣労働 (Leiharbeit) 制度廃止


同盟90/緑の党

○週当たり労働時間 (Arbeitszeit) を、労働者自身の状況に応じて30~40時間の間で自由に設定可能なよう制度改正


自由民主党

○週当たり労働時間を最大48時間までに制限


ドイツのための選択肢

○会社全体の派遣労働者 (Leiharbeiter) の割合を15%に制限
○派遣労働者6ヶ月勤務後の正社員登用義務化


労働政策が一番充実しているように感じたのは左翼党。

中道左派と評価されているドイツ社会民主党での具体的な労働政策が案外少なく見え、中道右派若しくは保守路線を走っているドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合の方が具体性を帯びているように感じます。



教育・福祉政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○月当たり児童手当 (Kindergeld) を25ユーロ分引き上げ(子供1~2人:192ユーロ→217ユーロ、子供3人:198ユーロ→223ユーロ、子供4人以上:223ユーロ→248ユーロ)
○子供のいる若い夫婦のマイホーム購入へ年間最大1,200ユーロを無償支援(10年間継続)
○家賃適正化のため、2021年までに150万戸の公共住宅創出


ドイツ社会民主党

○家族労働時間制(Familienarbeitszeit、週26~36時間)導入
○子供のいる家庭で、家族労働時間制での要件を満たした場合、親一人につき月150ユーロ支給(最大2年間、シングルマザー若しくはファザー、同性婚家庭も対象)
○保育園への保育料 (Kita-Gebühren) の段階的廃止
○職業訓練に掛かる費用の廃止
○現行67歳となっている年金支給開始年齢 (Renteneintrittalterの、更なる年齢引き上げなし
○父もしくは母と子供を1組として、1組当たり年間150ユーロの「子供ボーナス (Kinderbonus) 」支給(最大2万ユーロまで)
○国立学校でのイスラム教に関する授業実施


左翼党

○月当たり児童手当を一律328ユーロに引き上げ
○介護福祉職10万人新規雇用創出
○今後1年間で250万戸の公共住宅創出
○年金受給開始年齢を現行の67歳から65歳に引き下げ
○月1,050ユーロの「最低年金受給額 (Mindestrente) 」導入


同盟90/緑の党

○シングルマザー・ファザー (Alleinerziehende) 及び同性婚家庭 (Regenbogenfamilien) も、異性家族と同様に様々な支援が受けられるよう、親としての権限を法的に明文化
○100万戸住宅新規創出
○人生設計及び労働環境に応じた年金受給開始年齢のフレキシブル化(最少60歳から)


自由民主党

○連邦州毎に異なる学習要領の統一
○生徒とその親による学校評価制度導入
○人生設計及び労働環境に応じた年金受給開始年齢のフレキシブル化(最少60歳から)


ドイツのための選択肢

○シングルマザー・ファザー非支援対象
○父と母で構成された親だけを家族モデルとする
○国公立学校でのイスラム教に関する授業禁止
○労働開始45年目からの年金受給開始



左派と評されるドイツ社会民主党と左翼党の教育・福祉政策が充実しているように感じます。

特に左翼党の教育・福祉政策は、経済政策で取り上げた「富裕税」を財源にするとしています。

それだけでなく、ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合も、子供を持つ家庭への支援に積極的です。

ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟・ドイツ社会民主党で組まれている現政権、いわゆる「大連立 (Große Koalition) 」が段階的な67歳への引き上げを決定した年金受給開始年齢について、各現野党はそれに代わる年金政策を打ち出しています。

ドイツ社会民主党、同盟90/緑の党、自由民主党が、シングルマザー・ファザー家庭或いは同性婚家庭の尊重を明確にしている一方で、ドイツのための選択肢は従来の父母・子供で構成される家族のみを支援対象としています。



環境問題対策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○2023年までの原子力発電所 (Atomkraftwerk) 全廃
○特定の自動車を対象とした使用禁止措置なし
○ドイツ全土に電気車交通網及び水素車交通網 (Wasserstoffmobilität) のための充電スタンド又は水素ステーション (Ladesäule) を計5万箇所設置
○2015年締結「パリ協定 (Pariser Klimaschutz-Abkommen) 」を継続支持


ドイツ社会民主党

○2015年締結「パリ協定」を継続支持
○遺伝子組み換え食物 (Gentechnisch veränderte Organismen) の栽培禁止


左翼党

○2016年時点32.3%の自然エネルギー (Erneuerbare Energie) 利用比率を、2020年までに43%達成するための、自然エネルギー拡充への資金投入


同盟90/緑の党

○原子力発電所を2022年までに全て廃炉
○火力発電所 (Kohlekraftwerk) を20ヶ所即廃炉
○2030年までに全ての自動車が排出ガス (Abgas) を出さないような投資の加速
○農場での農薬使用禁止
○遺伝子組み換え食物禁止
○北アフリカ沿岸での過剰漁獲禁止
○動物実験の見直し
○動物性食品(食肉、牛乳、卵等)の飼育・生産過程表示義務


自由民主党

○特定の電力源だけに頼らない、様々な電力源からの電力利用


ドイツのための選択肢

○「脱炭素化 (Dekarbonisierung)」反対
○火力発電所・原子力発電所の稼働継続
○ディーゼル自動車 (Dieselfahrzeuge) の使用継続
○風力発電機 (Windenergieanlage) の増設取り止め


環境保護について思い切った姿勢を見せているのは同盟90/緑の党。

ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合、ドイツ社会民主党、左翼党は中道の環境保護路線と見て取れます。

自由民主党は環境問題についての明確な政策は打ち出していない一方、環境保護のほぼ反対路線に向かっているのがドイツのための選択肢と言えるでしょう。



難民・移民受け入れ政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○移住してきた専門職者 (Fachkräfte-Zuzug) への課税
○EU加盟国として、EUとしての難民に関する協定を、トルコ以外の関係国とも締結することを推進
○2015年のような大量難民・移民受け入れは今後行わず、違法移住 (Illegale Migration) を減らす政策の実行


ドイツ社会民主党

○難民の諸権利保証
○EU加盟国間での難民の公平な分配 (Verteilung)
○違法移民のEU加盟国への入国阻止を担う機関への支援
○移住してきた専門職者への課税


左翼党

○EU・トルコの難民に関する協定 (EU-Türkei-Abkommen) 廃止
○難民の基本的人権 (Grundrechte) 保障


同盟90/緑の党

○難民の基本的人権保障
○難民の強制帰還 (Zurückkehr) なし


自由民主党

○紛争地域からの難民、基本的人権以上の権利保障なし及び紛争終結後強制帰還
○専門職者の移住歓迎


ドイツのための選択肢

○移民・身元の特定できない難民申請 (Asylbewerbung) 認めず


僕がベルリンに滞在していた2015年に約80万人の難民及び難民を受け入れて以降、彼らに対する保護・保障政策に関する議論が活発になっている中、トルコ系ドイツ人が代表候補者の一人になっている同盟90/緑の党は、難民の強制帰還をさせないことを明確にしています。

一方、程度の差はあれ、高度の知識をもった移民の受け入れを歓迎する政党は多く見られますが、彼らに対して課税対象する政策を打ち出した政党もあります。


内外政治政策


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

○トルコは様々な国際問題解決に重要な国家である一方、現状でのEU加盟 (EU-Beitritt) 反対
○ドイツ全土で適用できる警察法 (Musterpolizeigesetz) の検討及び1万5,000人の警察官増強
○連邦軍 (Bundeswehr) の兵士1万8,000人増強
○イスラム教徒又は施設へのヘイト行為 (Hass) への罰則
○EU外から移住してきた両親がドイツで産んだ子供の子供以降(移民3世以降)に対する二重国籍 (Doppelte Staatsbürgerschaft) 廃止


ドイツ社会民主党

○ドイツ全土で1万5,000人の警察官増強。
○治安維持のための連邦軍動員なし。
○イスラム教徒又は施設へのヘイト行為 (Hass) への罰則
極右勢力による犯罪行為への罰則
○二重国籍の対象者制限なし
○EU及びNATO加盟国以外への三国間武器輸出停止
○ドイツ連邦議会総選挙及び欧州議会議員選挙権の16歳への引き下げ


左翼党

○二国間及び複数国間自由貿易協定 (Freihandelsabkommen) 反対
○EU加盟国を含む国外への武器輸出停止
○海外駐在連邦軍兵士の帰還
○NATOとの協力関係見直し


同盟90/緑の党

○LGBT・ユダヤ教徒・ムスリム・ロマ等あらゆる差別 (Diskriminierung) 解消に向けた努力継続
○二重国籍の対象者制限なし
○治安維持のための連邦軍動員反対
○紛争地域への武器輸出禁止


自由民主党

○イスラム過激派によるテロ対策として、他国情報機関との連携強化
○連邦軍のEU及びNATOへの積極的協力推進
○紛争地域への武器輸出禁止
○二国間及び複数国間自由貿易協定賛成
○LGBTの権利保障


ドイツのための選択肢

○主権国家としてのドイツを取り戻すためとしてのEU脱退 (EU-Austritt)
○基本法改正時にのみ可能となっている国民投票
(Volksabstimmung) の権限拡大
○大統領 (Bundespräsident) の直接選挙制 (Direktwahl) 導入
○議員定数を500に制限
○通貨ユーロから脱退し、新国内限定通貨「ドイツマルク (Deutsche Mark) 」導入
○連邦軍の海外派兵なし
○ロシアとの緊張緩和及び関係強化
○トルコのEU加盟交渉即中止
○兵役義務 (Wehrpflicht) の復活
○二国間及び複数国間自由貿易協定 (Freihandelsabkommen) 反対
○ドイツ企業の発展途上国への進出支援
○刑事責任を問える年齢 (Strafmündigkeitsalter) を満12歳までに引き下げ
○二重国籍を、ドイツで産まれた者のみに限定
○イスラム国家等海外からの投資を通じてのモスク建設反対
○ブルカの公共空間での着用禁止


政治課題において主なキーワードとなっているのが、武器の輸出・二重国籍・連邦軍兵士の海外派兵・LGBTの権利・自由貿易協定への参加です。

基本的傾向としては、右派が武器輸出容認・二重国籍制限・連邦軍の海外派兵容認・自由貿易協定への参加。

左派が、武器輸出禁止・二重国籍容認・連邦軍海外派兵禁止・自由貿易協定不参加です。


また、ドイツのための選択肢は基本的に「主権国家としてのドイツを取り戻すため」として外政への不干渉主義の立場を取っており、国外での要因による不利益を被ることを避けたい姿勢が見て取れます。

しかし、一方でロシアとの関係回復や発展途上国への投資拡大というのは、個人的には外政不干渉の論理から程遠いように見えます。


終わりに‐ドイツ連邦議会総選挙の注目点


今回の総選挙での僕なりの注目点は以下の3つです。


1. ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合とドイツ社会民主党、どちらが第一党になるか?
2. 第三党の座はどの政党に?


世論調査研究機関Infratest dimapの「今日もし選挙の投票日だったら、第二投票 (Zweitstimme) はどの政党に入れるか?」2017年9月14日調査結果によれば、各政党の得票率は次の通りになっています。


ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)・バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU) 連合:37.0%
ドイツ社会民主党 (SPD) :20.0%
左翼党 (Die LINKE) :9.0%
同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grüne) :7.5%
自由民主党 (FDP) :9.5%
ドイツのための選択肢 (AfD) :12.0%


第一党については、ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合が、ドイツ社会民主党に1.5倍近くの差をつけて独走状態に入っていますが、単独での過半数は厳しく、スムーズな政権運営に当たっては、ドイツ社会民主党若しくは少数政党との連立が必要な状況になっています。

また、第三党についてはドイツのための選択肢が僅かではありますがリードしており、ドイツ連邦議会での初めての議席獲得だけでなく、10%以上の議席獲得も視野に入っています。

2017年9月24日投票後の選挙結果が如何なるものになるか、注目です!

2017/09/06

シリーズドイツ連邦議会総選挙2017 Part 2 - 議席獲得を狙うドイツの政党についておさらいしてみた!

前回Part 1はこちら


北朝鮮情勢だけでなく、ドイツ政治情勢の行く末を見守っているタケオです。

2017年9月24日のドイツ連邦議会総選挙まで1ヶ月を切りました

今回はドイツ連邦議会総選挙での議席獲得を狙うドイツの政党について、2017年1月時点で議席数の多い順に紹介していきます。

尚、僕はドイツ政治専門家というわけではありませんので、僕自身も勉強という意味で、主にドイツ語資料を参考にしながら見ていきたいと思います。

目次
1. ドイツ連邦議会総選挙における政党の選挙戦略の流れ
2. ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)
3. ドイツ社会民主党 (SPD)
4. 左翼党 (Die LINKE)
5. 同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grüne)
6. バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU)
7. 自由民主党 (FDP)
8. ドイツのための選択肢 (AfD)
9. 終わりに





ドイツ連邦議会総選挙における政党の選挙戦の流れ



ドイツの政党を紹介する前に、ドイツ連邦議会総選挙の選挙日前に、ドイツの政党がどのような活動をするのかを見ていきます。

ドイツでは、日本のように選挙の告示日以降でなければ街頭演説等の選挙運動をしてはならないというものはないそうで、主に党内投票にて選挙戦における顔となる代表候補者 (Spitzenkandidat) 、特にドイツ連邦議会で多くの議員を抱えている政党については首相候補者 (Kanzlerkandidat) が選出されてからが実質的な選挙運動のスタートと言えるようです。

今回のドイツ連邦議会総選挙における政党別代表候補者が決まったのは、昨年2016年12月~2017年4月にかけてでしたので、日本の選挙運動と比べると随分早くから政党の公約アピールが始まることとなります。

代表候補者は総選挙での公約 (Wahlprogramm) 作成を先導し、ラジオ・テレビ局からのインタビューもこなします。

以降の章から各政党のことを詳しく見ていきます。



ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)


党設立年:1945年
2013年小選挙区獲得数:191
2013年比例代表得票率:34.1%
2017年1月現在議席数:253


党設立以来保守の流れを汲んでいますが、昨今は2022年までのドイツ内原子力発電所全廃や移民・難民の積極的受け入れ等中道右派寄りになっている、ドイツの代表的政党

旧西ドイツ時代から数えると、コンラード・アデナウアー(Konrad Adenauer)、ルードヴィヒ・エアハルト (Ludwig Erhard) 、クルト・ゲオルク・キージンガー (Kurt Georg Kiesinger) 、ヘルムート・コール (Helmut Kohl) 、そして現在のアンゲラ・メルケル氏 (Angela Merkel) と、これまで5人の首相を送り出しています。

前回2013年のドイツ連邦議会総選挙では、バーデン=ヴュルテンベルク州 (Baden-Würtemburg) 、メクレンブルク=フォアポンメルン州 (Mecklenburg-Vorpommern) 、ザクセン州 (Sachsen) 、ザクセン=アンハルト州 (Sachsen-Anhalt) 、ザールラント州 (Saarland) 、チューリンゲン州 (Thüringen) 6州の全小選挙区を制する等して、第一党の座を獲得しました。

幼少期から東西ドイツ統一 (Wiedervereinigung) までを旧東ドイツで過ごし、2005年から首相の座に就いているメルケル氏が、2016年11月の記者会見で4期目の首相を目指すことを表明しました。



ドイツ連邦政府オープンデー (Tag der offenen Tür der Bundesregierung) にて、連邦首相府 (Bundeskanzleramt) でドイツ一般民衆と握手するアンゲラ・メルケル氏(2015年8月30日撮影)



ドイツ公共放送局ARDの、アンゲラ・メルケル氏とのインタビュー番組(2017年7月16日放送)


参考リンク
ドイツキリスト教民主同盟公式ウェブサイト(ドイツ語)
1949年以降の首相|ドイツ連邦首相府(ドイツ語)

ドイツ社会民主党 (SPD)


党設立年:1875年(ドイツ社会労働党として)
2013年小選挙区獲得数:58
2013年比例代表得票率:25.7%
2017年1月現在議席数:193


1871年のプロイセン王国 (Königreich Preußen) によるドイツ統一から僅か4年後にドイツ社会労働党 (Sozialistische Arbeiterpartei Deutschlands, SAP) として結党された、中道左派路線の歴史ある政党で、1890年から現政党名。

これまでヴィリー・ブラント (Willy Brandt) 、 ヘルムート・シュミット (Helmut Schmidt) 、ゲアハルト・シュレーダー氏 (Gerhard Schröder) の3人が首相の座に就きました。

前回2013年のドイツ連邦議会総選挙では、ブレーメン市 (Bremen) とハンブルク市 (Hamburg) でドイツキリスト教民主同盟より多くの小選挙区議席を勝ち取ったものの、議会第一党とはなりませんでした。

それでも現在は、キリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟と共に、いわゆる「大連立 (Große Koalition) 」を組んで政権運営の一翼を担っています。

しかし、2017年3月の党員投票において異例の100%支持で党首及び首相候補者に選出された前欧州議会議長マルティン・シュルツ氏 (Martin Schluz) は、メルケル氏との対決姿勢を鮮明にし、今回の総選挙でシューレーダ氏時代以来の第一党の座並びに政権奪回を狙っています。



ドイツ公共放送局ARDの、マルティン・シュルツ氏とのインタビュー番組(2017年5月15日放送)


参考リンク
ドイツ社会民主党公式ウェブサイト(ドイツ語)
1949年以降の首相|ドイツ連邦首相府(ドイツ語)
マルティン・シュルツ‐100%候補者|ツァイト紙(ドイツ語)



左翼党 (Die LINKE)


党設立年:2007年
2013年小選挙区獲得数:4
2013年比例代表得票率:8.6%
2017年1月現在議席数:64


ドイツ社会民主党にもかかわらず、2003年に発表された「アジェンダ2010 (Agenda 2010) 」等中道路線に舵を切っていたシュレーダー政権への批判勢力が集結して結党された、文字通り左派傾向の強い政党

旧東ドイツ地域で強い地盤を持っていて、前回2013年のドイツ連邦議会総選挙では、旧東ベルリン (Ost-Berlin) 地域内の4つの小選挙区で議席を獲得した他、ベルリン市 (Berlin) を除く旧東ドイツ州の比例代表得票率が全て20%を超えました。

今回の総選挙での代表候補者は、党内対立の関係から、現党首であるカトヤ・キッピング氏 (Katja Kipping) とベルント・リーキシンガー氏 (Bernd Riexinger) ではなく、父親がイラン人で旧東ドイツ・イェーナ (Jena) 出身のザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏 (Sahra Wagenknecht) と、旧東ドイツ時代は支配政党のドイツ社会主義統一党 (Sozialistische Einheitspartei Deutschlands) の党員だったディートマール・バルチュ氏 (Dietmar Bartsch) が選出されました。



ドイツ語国際放送局ドイッチェ・ヴェレの、ザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏とのインタビュー番組(2017年6月29日放送)


参考リンク
左翼党公式ウェブサイト(ドイツ語)
2013年ドイツ連邦議会総選挙結果資料3|ドイツ選挙管理委員会(ドイツ語)
ザーラ・ヴァーゲンクネヒト|ドイツ連邦議会(ドイツ語)
ディートマール・バルチュ公式ウェブサイト(ドイツ語)
ツァイト紙2016年12月4日配信「バルチュとヴァーゲンクネヒトが左翼党代表候補者に (Bartsch und Wagenknecht sind Spitzenkandidaten der Linken) 」(ドイツ語)



同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grüne)


党設立年:1993年
2013年小選挙区獲得数:1
2013年比例代表得票率:8.4%
2017年1月現在議席数:63


1980年に旧西ドイツで産声を上げた緑の党 (Die Grüne) と、1991年に結党された同盟90 (Bündnis 90) が1993年に合併して誕生しました。

大都市や、黒い森 (Schwarzwald) が位置するバーデン=ヴュルテンベルク州で比較的厚い支持層を持ち、前回2013年のドイツ連邦議会総選挙では、ベルリン市内の小選挙区1つ分の議席を獲得した他、 ベルリン市・ブレーメン市・ハンブルク市・バーデン=ヴュルテンベルク州の比例代表得票率が10%となりました。

今回の総選挙での代表候補者としては、現共同代表の一人である、トルコから合法出稼ぎ労働者 (Gastarbeiter、ガストアルバイター) としてドイツにやって来た両親の下で育ち、トルコ系ドイツ人としては初の連邦議会議員となったジェム・オズデミル氏 (Cem Özdemir) 。

そしてもう一人は、オズデミル氏との対立が深まっていたもう一人の共同代表ジモーネ・ペーター氏 (Simone Peter) ではなく、旧東ドイツ出身で、1989年には母国の民主化運動に参加していたカトリン・ゲーリング=エッカルト氏 (Katrin Göring-Eckardt) が選出されました。



ドイツ語国際放送局ドイッチェ・ヴェレの、ジェム・オズデミル氏とのインタビュー番組(2017年7月19日放送)



ドイツ公共放送局ARDの、カトリン・ゲーリング=エッカルト氏とのインタビュー番組(2017年7月2日放送)


参考リンク


バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU)


党設立年:1945年
2013年小選挙区獲得数:45
2013年比例代表得票率:7.4%
2017年1月現在議席数:56


バイエルン州 (Bayern) の地域政党ですが、1949年より現在まで継続してドイツキリスト教民主同盟と連立を組んでいて、国政にも進出しています。

ドイツキリスト教民主同盟はバイエルン・キリスト教社会同盟と選挙協力を行い、バイエルン州の小選挙区では全てバイエルン・キリスト教社会同盟所属の候補者として立候補しています。

前回2013年総選挙においては、バイエルン州に45ある小選挙区で全て議席を獲得した上に、比例代表で更に11議席を上乗せしました。

党首であるホルスト・ゼーホーファー氏 (Horst Seehofer) を中心に保守傾向が強く、連立先のトップであるメルケル首相とは、特に移民・難民受け入れ政策を中心に度々対立しますが、2017年2月にはゼーホーファー氏がメルケル氏の4期目の首相挑戦を容認しています。


参考リンク

自由民主党 (FDP)


党設立年:1948年
2013年小選挙区獲得数:0
2013年比例代表得票率:4.8%(議席獲得資格無し)
2017年1月現在議席数:0


1948年に旧西ドイツ中の自由主義を標榜する少数政党が結集して誕生した、主に国民自由主義を掲げる政党

日本の同名の政党とは全く異なり、第一党となったことは一度もありませんが、1949年~2013年まで途切れることなくドイツ連邦議会に議員を送り込み、時にはドイツキリスト教民主同盟、またある時はドイツ社会民主党の連立パートナーとして重要な役割を果たしたこともあったようです。

しかし前回2013年の総選挙では、小選挙区で1つも勝てなかったどころか、比例代表得票率でも4.8%と、議席配分条件の5%に僅かに届かず、1949年以来の議席無しとなってしまいました。

前回の総選挙後に、当時若干34歳だったクリスティアン・リントナー氏 (Christian Lindner) が党首に就任、今回の総選挙では代表候補者としても議席回復、そしてその先の政権への連立パートナーとしての参加を狙っています。



ドイツ語国際放送局ドイッチェ・ヴェレの、クリスティアン・リントナー氏とのインタビュー番組(2017年8月23日放送)


参考リンク
自由民主党公式ウェブサイト(ドイツ語)
2013年ドイツ連邦議会総選挙結果資料3|ドイツ選挙管理委員会(ドイツ語)
自由民主党について|ドイツ連邦政治教育センター(ドイツ語)



ドイツのための選択肢 (AfD)



党設立年:2013年
2013年小選挙区獲得数:0
2013年比例代表得票率:4.7%(議席獲得資格無し)
2017年1月現在議席数:0


前回2013年総選挙の5ヶ月前に誕生したばかりの新しい政党。

いわゆる「ユーロ危機」における、財政危機に陥っていた欧州連合加盟国への財政支援への反対が党結成の契機であるため、統一通貨ユーロからの離脱が真っ先の党公約になっています。

しかし、難民申請受け入れの特定機関を通じての厳格化、モスクの外国からの財政支援禁止、ヒジャブ着用禁止、同性婚反対等をも党是としていて、周囲からは極右政党との評価が一般的です。

前回の総選挙では、結党から総選挙までの期間が短すぎたからか議席獲得には至りませんでしたが、それでも現在のドイツ経済の好調の恩恵に預かっていない人たちからの支持が急拡大し、前回総選挙以降に行われた欧州議会議員選挙 (Europawahl) 及びドイツ地方議会議員選挙 (Landtagswahl) では、少ないながらも軒並み議席を獲得し、今回の総選挙で国政レベルで初めての議席獲得なるかが注目されます。

但し、今回代表候補者として選出されたのは、ドイツ連邦議会進出に当たり極右路線から現実路線への変更を目指していた党首フラウケ・ペトリー氏 (Frauke Petry) ではなく、強硬派で76歳のアレクサンダー・ガウランド氏 (Alexander Gauland) と経済的自由主義論者で38歳のアリス・ワイデル氏 (Alice Weidel) で、強硬路線を選択したことが全ドイツ有権者にどのような影響を与えるかが気になるところです。



ドイツ語国際放送局ドイッチェ・ヴェレの、アレクサンダー・ガウランド氏とのインタビュー番組(2017年8月17日放送)


参考リンク
ドイツのための選択肢公式ウェブサイト(ドイツ語)
2013年ドイツ連邦議会総選挙結果資料3|ドイツ選挙管理委員会(ドイツ語)
ドイツのための選択肢について|ドイツ連邦政治教育センター(ドイツ語)
南ドイツ新聞2017年4月23日配信「ガウラントとワイデル AfDのドイツ連邦議会進出に挑む (Gauland und Weidel führen AfD in die Bundestagswahl) 」(ドイツ語)



終わりに


如何でしたか。

ドイツの政界は、基本的にはキリスト教民主同盟とドイツ社会民主党の2大政党制と見ることが出来ますが、その他にも主張の違いから様々な政党があることがわかりました。

それぞれの政党が今回の総選挙でどの位議席を獲得できるか注目したいと思います。