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2017/09/26

シリーズドイツ連邦議会総選挙2017 Part 4 - 総選挙の結果おさらいと今後の注目点!

2017年10月22日に行われる見通しの衆議院議員総選挙を前に、ドイツ政治一大イベントにも注目していたタケオです。

2017年9月24日にドイツ連邦議会総選挙の投票が行われました!

日本の報道でもニュースになっていますが、自分でもドイツ政治の勉強の意味も込めて、今回の総選挙結果のおさらいを、そして今後の注目点等について書きたいと思います

目次
1. ドイツ連邦議会総選挙の政党別結果
2. ドイツ連邦議会総選挙結果を受けての各政党の反応
3. ドイツ連邦議会総選挙後の注目点
4. 終わりに



ドイツ連邦議会総選挙の政党別結果


ドイツ連邦議会総選挙での第二投票 (Zweitstimme、日本でいう比例票得票率に相当) 得票率及び議席数(今回の全議席数は709)を政党別に紹介します。


ドイツキリスト教民主同盟 (CDU)・バイエルン・キリスト教社会同盟 (CSU) 連合 (Union)

第二投票得票率:33.0%(前回比-8.5%)
獲得議席数:246(前回比-65議席

ドイツを構成する16の連邦州の内14州で第二投票得票率1位と多くの支持を獲得し、議会第一党の座は守ったものの、前回総選挙と比較すると大きく議席数を減らす結果となりました。

主な支持層としては、高学歴者・年金生活者となっています。


ドイツ社会民主党 (SPD)

第二投票得票率:20.5%(前回比-12.5%)
獲得議席数:153(前回比-40議席

前回と同様ブレーメン市で第二投票得票率1位を獲得したものの、全国規模での第二投票得票率は10%以上の大幅減となり、第二次世界大戦後では最悪の結果となりました。

主な支持層としては、労働者・年金生活者・失業者です。


ドイツのための選択肢 (AfD)

第二投票得票率:12.6%(前回比+7.9%)
獲得議席数:94

議会進出条件の第二得票率5%をクリアして結党以来初の議席を果たしただけでなく、他の少数政党を押しのけて議会第三党となりました。

ザクセン州 (Sachsen) においては小選挙区で3議席を獲得し、第二投票得票率でも1位となりました。


主な支持層としては、労働者・失業者・30~40代・旧東ドイツ地域住民です。


自由民主党 (FDP)

第二投票得票率:10.7%(前回比+5.9%)
獲得議席数:80


小選挙区では1つも議席を獲得出来ませんでしたが、議会進出条件の第二得票率5%を上回り、前回総選挙で議席獲得を果たせなかった悔しさを晴らして議席回復を果たしました。

自営業者からの支持を比較的多く集めました。


左翼党 (Die Linke)

第二投票得票率:9.2%(前回比+0.6%)
獲得議席数:69(前回比+5議席


前回総選挙での得票率をほぼ維持して、議席保持に成功しました。

小選挙区でも旧東ベルリン地区 (Ost-Berlin) で4つ、ザクセン州で1つ勝利を果たす等、旧東ドイツ地域からの支持を比較的多く集めました。


同盟90/緑の党 (Bündnis 90/Die Grünen)

第二投票得票率:8.9%(前回比+0.5%)
獲得議席数:67(前回比+4議席


左翼党と同様、前回総選挙での得票率をほぼ維持した結果となりました。


小選挙区は前回と同様ベルリン市 (Berlin) で1つ獲得しています。

高学歴者・25歳以下の若い世代・自営業者から多くの票を得ました。


参考リンク
ドイツ連邦議会総選挙の結果|ドイツ選挙管理委員会(ドイツ語)
ドイツ連邦議会総選挙特設ページ|ARD(ドイツ語)



ドイツ連邦議会総選挙結果を受けての各政党の反応


ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合

首相でありドイツキリスト教民主同盟党首でもあるアンゲラ・メルケル氏 (Angela Merkel) は議会第一党の座を維持したことに対して支持者に感謝の意を示しました。

そして、「これから私たちの前には政党「ドイツのための選択肢」の議会進出という大きなチャレンジが待っている」とした上で次のように述べました。


Wir wollen die Wählerinnen und Wähler der AfD zurückgewinnen durch Lösung vom Problem, durch Aufnehmen ihrer Sorgen, ihrer Ängste zum Teil.ドイツのための選択肢を選んだ有権者に対し、問題解決・不安や不満に対する理解を通じて信頼を取り戻したいと思います。




アンゲラ・メルケル首相、ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教民主同盟連合ドイツ連邦議会総選挙の勝利宣言会見(2017年9月24日)


ドイツ社会民主党

欧州委員会議長からドイツ社会民主党党首に転じるも、議席を大幅に減らしてしまったマルティン・シュルツ氏は、今回総選挙の結果について、「大きな敗北」と認めました。

しかし、これまで連立政権、所謂「大連立」を組んできたドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合との対決姿勢を改めて明確にした上で次のように述べました。


Wir werden sehen, welche Regierung zustande kommt.Wir werden der Regierung in konstruktiver Form als Opposition entgegentreten.どのような政権が誕生するか見極めた上で、その政権に建設的な形で野党として立ち向かう決意であります。





シュルツ氏、ドイツ社会民主党歴史的惨敗を受けての演説(2017年9月25日)


ドイツのための選択肢 (AfD)

アリス・ワイデル代表候補者は、初の議会進出確実を受けての支持者を前にした演説で、ドイツのための選択肢の議会でまず初めに取り組むこととして、アンゲラ・メルケル首相を、政権運営での失政を問う審査委員会 (Untersuchungausschuss) にかけることを支持者に約束しました。




ドイツのための選択肢支持者の前でのアリス・ワイデル氏演説(2017年9月24日)


自由民主党 (FDP)

議席回復を果たした自由民主党党首のクリスティアン・リントナー氏 (Christian Lindner) は、支持者に感謝の意を示した上で、次のように議会再進出への決意を述べました。


Nach einem Scheitern ist ein neuer Anfang möglich.挫折の後に新たな始まりがあります。




自由民主党支持者を前にしたクリスティアン・リントナー氏の演説(2017年9月24日)


左翼党

左翼党代表候補者のザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏 (Sahra Wagenknecht) は、「最大の心配事は「ドイツのための選択肢」の議会進出」とし、対極に立つドイツのための選択肢を批判した上で、次のように支持者の前で宣言を行いました。


Wir werden der soziale Oppositionsführer bleiben!社会主義野党の先頭に立ち続けます!




左翼党支持者を前にしたザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏の演説(2017年9月24日)


同盟90/緑の党

ドイツ連邦議会での議席を保持した同盟90/緑の党代表候補者であるカトリン・ゲーリング=エッカルト氏 (Katrin Göring-Eckardt) は、ドイツ連邦議会総選挙投票日の翌日、記者団を前に次のように述べて、ドイツのための選択肢の議会進出に対する民主主義への危機感を口にしました。


Es gibt erstmal die Aufgabe der Demokratin und Demokraten deutlich zu machen "Wir sind die große Mehrheit."民主主義の国に暮らす人にとって先ずはっきりさせるべきことは、「私たちは多くの票を勝ち取った」ということです。




同盟90/緑の党代表候補者カトリン・ゲーリング=エッカルト氏の記者団とのインタビュー(2017年9月25日)


ドイツ連邦議会総選挙後の注目点‐連立政権の組み合わせ


ドイツ連邦議会総選挙後の注目点としては、どのような連立政権が組まれるのか、ということです。

ドイツキリスト教民主同盟・バイエルン・キリスト教社会同盟連合が第一党となったものの、予算案や法律成立等議会をスムーズに運営するには、議席の過半数以上(355議席以上)となるような連立パートナーが必要になってきます。

先に書いたように、これまでいわゆる「大連立」を組んできたドイツ社会民主党については、現党首のマルティン・シュルツ氏が拒否の姿勢を見せているため、ドイツメディアの間では、自由民主党・同盟90/緑の党との連立が現実的との見方が多数となっています。

ちなみに、この3党の連立は、それぞれの党のイメージカラー(ドイツキリスト教民主同盟:黒、自由民主党:黄、同盟90/緑の党:緑)をとって、「ジャマイカ連立 (Jamaika Koalition) 」と呼ばれています。

しかし、この組み合わせでも、環境政策を中心に各政党間の立場の違いが大きく、連立交渉は困難を極めそうです。



終わりに‐メルケル首相はドイツのための選択肢投票者の信頼を取り戻せるのか?


今回のドイツ連邦議会総選挙結果で興味深かったのは、2つの巨大政党の減少分が、ドイツのための選択肢或いは自由民主党の増加分に繋がっているということです。

このことから、「大連立」の政策に失望したり不満を持ち始めたりした有権者が、前回の総選挙で議員を送り込めなかった、より保守傾向の強い政党に支持を変えた、という見方をすることが出来ると思います。

このことから、アンゲラ・メルケル首相も自身で述べていたように、ドイツキリスト教民主同盟にとっては、ドイツのための選択肢への投票に流れた有権者のことを理解し、信頼を取り戻せるか、が今後の重要なカギになって行くと思われます。

一方で、メルケル氏は現在63歳、次回2021年の総選挙では67歳となり、2005年以来12年間首相の座に就いているメルケル氏の有力な後継者が流石に現れないと、党の趨勢に関わって来る可能性があると思っています。

しかし、先の大戦での敗戦・東西分断を経験したドイツだからこそ生まれた「寛容精神」、昨今では難民の大量受け入れで話題となった「ウェルカム文化 (Wilkommenskultur) 」の精神は崩して欲しくないと願っています。

僕がベルリンに滞在していた2015年というのは正に難民の大量受け入れ時期と重なり、トップニュースは毎日難民関連という程、「難民」がキーワードになった社会状況でした。

そんな中で人道支援優先としたメルケル首相の難民受け入れの決断は、旧東ドイツで生まれ育ち、民主化運動に参加していたメルケル首相だからこそ出来たことだと感じていました。

不寛容な雰囲気がドイツだけでなく全世界中で蔓延している中で、難民及び移民のドイツ社会への溶け込み、また経済成長と福祉の充実の両立は非常に難しいですが、次回総選挙までの4年後にそれがどれだけドイツの中で進むのか、或いは後退するのか、ドイツ語学習者として注目して行きたいと思います!

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