今更ではありますが、2015年9月24日にYoutube上に公開されたアルジャジーラ英語版(Al Jazeera English)の番組101 Eastを視聴しました。
この回では韓国の最新食文化事情について取り上げていたのですが、この中でモッパン(먹방)について言及された部分を見て思ったことについて書きたいと思います。
目次
1. "Kimchi Crazy"の内容
2. モッパン(먹방)とは
3. モッパン(먹방)の種類
4.「食」は現実逃避の場?
5.終わりに
"Kimchi Crazy"の内容
"Kimchi Crazy"と題された番組の中では、キムチ(김치)の世界化に向けた動き、韓国で流行しているモッパン、「料理男子」の急増が取り上げられていました。
South Korea: Kimchi Crazy - 101 East
モッパン(먹방)とは
モッパンとは、「食べる」という意味の動詞モッタ(먹다)の語幹モッ(먹)と、「放送」という意味の名詞パンソン(방송)のパン(방)をくっ付けた造語で、食べ物や料理に関する番組のことを指します。
僕は2015年12月ソウルに滞在し始めるまで、モッパンが流行っていることや、そもそもモッパンという言葉を全く知らなかったのですが、高麗大学校語学堂4級インタビュー課題の中で、これを取り上げた学生がいたことで、初めて知りました。
僕は毎年1回程度韓国を訪問しているにも関わらず、モッパンという言葉を知らず、しかもそれが急速に韓国人の間で流行していることに、改めて韓国社会の変化の速さを実感しました。
モッパン(먹방)の種類
僕が見る限り、韓国でのモッパンは、大まかに分けて2つに分類できると思います。
①料理家や芸能人が料理の腕を見せるテレビ番組
②一般人が自身の食べる姿を見せるインターネット放送
①について代表的な番組を挙げると、SBS「ペク・ジョンウォンの3大天王(백종원의 3대천왕)」と、JTBC「冷蔵庫をお願い(냉장고를 부탁해)」でしょう。
SBS「ペク・ジョンウォンの3大天王」は、料理家兼実業家であるペク・ジョンウォン(백종원)が推薦する食堂・レストランを紹介する番組です。
SBS「ペク・ジョンウォンの3大天王」第55回の一部
ペク・ジョンウォンがプロデュースしているコーヒーチェーン「ペッタバン(백다방)」も人気です。 |
JTBC「冷蔵庫をお願い」は、有名人2人の冷蔵庫の中に残っている食材のみを使い、料理家たちが料理を作って腕を競う番組です。
因みにこの番組の司会者2人の内1人は、元韓国サッカー代表選手の安貞桓(안정환、アン・ジョンファン)です!
JTBC「冷蔵庫をお願い」第99回予告動画
一方②については、僕があまり関心がないので、代表的な人物はわかりませんが、"Kimchi Crazy"を見る限りでは、一般人が好きな食べ物を思う存分食べる姿を見て楽しむ、というのが一般的な内容に思えます。
「食」は現実逃避の場?
僕が"Kimchi Crazy"を見て気になったのは、16:38~17:01の間に出てくる、モッパンのファンだという男性の発言でした。
In Korea, the economy is down, many are unemployed and very depressed...
So food is a kind of escape from real life.
That food is healing for us.
韓国は経済が停滞して多くの人が失業し、ストレスを感じています。
そういう中で「食」はある種の現実逃避の場です。
食べ物は私たちにとって「癒し」なんです。
「食はある種の現実逃避の場」とは一体何を意味するでしょうか。
現実逃避の方法ならば、身近で言えば仲の良い友達と他愛のないおしゃべりをしたり、本を読んだり、音楽を聴いたり、更にはどこか遠くへ旅行したり等。
さて、モッパンを見る場合はどうでしょう。
①のようなモッパンを見て、美味しい店で美味しいものを食べたり、料理の腕を上げるのは良いと思いますが、②のようなモッパンで実際に得られるものは何なのでしょうか。
様々な現実逃避の方法がある中で、何故他人の行動を見て単に楽しむだけという方法しか取らないのでしょうか。
韓国社会の現実を考えた場合、以下のようなことが考えられると思います。
①残業が多い韓国の社会人、趣味に充てられる時間のなさ
※参考リンク
2015年11月3日付中央日報 「韓国の労働時間、OECDで2位…ドイツの1.6倍」(日本語)
②給料を多くもらえない社会人が増えている中で、恋愛や結婚ができなくて1人でいる時間が多い
※参考リンク
2016年7月31日付聯合ニュース 「『金なくて結婚できない』 韓国未婚男性の4割超」(日本語)
終わりに
モッパンが流行する背景にあると思われる韓国社会の現実を考えると、これから韓国社会が向かおうとしているかもしれない、経済発展が望めないだけでなく、個々の行動力が失われていく社会に、果たして将来性があるでしょうか。
韓国が個々の強さが活かされていく社会になることを願うばかりです。
韓国社会の現実について詳しく知りたい方は、こちらの書籍もご参考に!
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