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2016/08/15

2016年光復節大統領祝辞で気になった点と、光復節のソウル中心部の様子

こんばんは、8月も中旬に入り、改めて平和の尊さを考えるタケオです。
韓国では、1945年8月15日の日本ポツダム宣言受諾及び降伏により、日本の植民地支配から解放されたことを記念し、毎年8月15日を光復節として祝日にしています。
この日に韓国に滞在するのは初めてでしたので、当日にソウル特別市(서울특별시)世宗文化会館にて(세종문화회관)行われた第71周年光復節慶祝式(제71주년 광복절 경축식)やソウル中心部の様子をお伝えしたいと思います。



◎光復節慶祝式での大統領祝辞で気になった点


朴槿恵大統領の祝辞に関しては、日本との関係言及を中心に皆さんもご存じかと思いますが、ここでは僕が個人的に気になった点について抜粋したいと思います。


※参考リンク
2016年8月15日付聯合ニュース 「朴大統領 第71周年光復節慶祝式全文(韓国語)」



朴槿恵大統領光復節祝辞の様子(聯合ニュースTVより)


언제부터인지 우리 내부에서는 대한민국을 부정적으로 묘사하는 잘못된 풍조가 퍼져가고 있습니다. 
우리의 위대한 현대사를 부정하고, 세계가 부러워하는 우리나라를 살기 힘든 곳으로 비하하는 신조어들이 확산되고 있습니다.
いつからなのか、大韓民国を否定的に描写する間違った風潮が広がっています。
我が国の偉大な現代史を否定し、世界が羨む我が国を住むのが大変な国だと卑下する新語が拡散しています。

타인에 대한 배려와 양보, 신뢰를 바탕으로 하기보다는 불신과 불타협, 상대방에 대한 인신공격들로 사회를 혼란시키는 일도 가중되어 가고 있습니다.
他人に対する配慮と譲歩、信頼を基にするよりは、不信と妥協のなさ、相手に対する攻撃により、社会を混乱させることも起きています。

국민 여러분, 우리 대한민국은 나라를 되찾기 위해 목숨까지 내던지고, 갖은 고통과 시련을 온 국민이 함께 참고 지키며 발전시켜 온 소중한 우리의 조국입니다.
国民皆さん、我が大韓民国は、国を取り戻すために命までかけ、苦痛と試練を全国民が耐えて守り、発展させてきた大切な祖国です。

자기비하와 비관, 불신과 증오는 결코 변화와 발전의 동력이 될 수 없습니다.
그것은 우리 스스로를 묶어버리고, 우리 사회를 무너뜨리게 할 뿐입니다.
이제 다시 대한민국 발전의 원동력이었던 도전과 진취, 긍정의 정신을 되살려야 합니다.
自己批判と悲観、不信と憎悪は決して変化と発展の動力にはなりません。
これは私たち自身を縛り付け、社会を潰すことに他なりません。
今再び大韓民国発展の原動力であった挑戦と進取、肯定の精神を取り戻さなければなりません。

모든 것은 마음에서부터 시작됩니다.
자본도, 자원도, 기술도 없던 시절에도 맨주먹으로 일어섰던 우리가, 세계 최고의 기술력과 풍부한 자본까지 가지고 있는 지금 못해 낼 것이 과연 무엇이 있겠습니까?
全ては心から始まります。
資本も資源も技術もなかった時代に素手で立ち上がった私たちが、世界最高の技術力と豊富な資本まで兼ね備えている今、できないことがあると言えるのでしょうか?

'할 수 있다'는 용기와 자신감을 갖고, '함께 가는' 공동체 의식으로 함께 노력하면 우리는 할 수 있습니다. 
※「やれる」という勇気と自信を持ち、「共に行く」共同体意識で共に努力すれば、私たちはやれます。

우리 내부의 분열과 반목에서 벗어나 배려와 포용으로 성숙한 시민의식을 키워나가고,모두가 스스로 가진 것을 조금씩 내려놓고, 어려운 시기에 콩 한쪽도 서로 나누며 이겨내는 건강한 공동체 문화를 만들어 간다면, 한 차원 높은 도약을 이뤄낼 수 있다고 확신합니다.
内部の分裂と反目から抜け出し、配慮と寛容で成熟した市民意識を育て上げ、皆がおのずから持っているものを少しずつ出し合い、大変な時期に豆一粒でも分け合って耐え抜いていく健康な共同体文化を作り上げたなら、一次元更に高い跳躍を成し遂げることができると確信しています。

우리는 해낼 수 있는 저력을 갖고 있습니다.
할 수 있다는 신념과 긍지를 토대로 우리 앞에 놓여있는 변화와 개혁의 과제를 완수해 내고, 다시 한 번 힘차게 도약의 미래로 나아갑시다!
私たちはやり遂げられる底力を持っています。
やれるという信念と矜持を土台とし、目の前にある変化と改革の課題をやり遂げ、再び力強く跳躍の未来へ向かっていきましょう!


これを聞いてまず思ったのは、貧富の格差が広がっている韓国社会において、苦しい生活を送っている人たちに非常に冷たいな、ということです。


「世界が羨む我が国を住むのが大変な国だと卑下する新語」に言及したのは、ヘル朝鮮(헬조선、英語で地獄という意味のhellと朝鮮を組み合わせた、韓国に住むのは非常に大変だということを表した新語)に代表される言葉がネットや若者を中心に広がっているためと思われますが、それらを「間違った風潮」と簡単に言ってしまうのは、現実的問題を直視していない現れだと感じます。


また、韓国人の人生観が多様化してきている中で、父である朴正煕(박정희、パク・チョンヒ)元大統領をはじめとした軍事独裁政権時の高度成長期を思い起こさせるような「共に行く共同体意識」とか「健康な共同体文化」といったものは、高度成長が終わっている現在にもあまねく通用するでしょうか。


日本と同じく殆どの人が大学に進学して就職を目指す中で、競争率が高くなってそこから離脱してしまう人が多く出てくるのは自明なわけで、多様な進路が認められ、出来ればそこに支援も加わってこそ、「私たちはやれる」と呼び掛けることができるのではないでしょうか。



リオデジャネイロ五輪のフェンシング男子エペ個人競技決勝において、朴相泳(박상영、パク・サンヨン)選手が、あと1ポイントで敗れるという危機的状況の中、「やれる」と独り言を言いながら臨んだ結果、4連続ポイントをあげて逆転金メダルを獲得したことを取り上げようとしたと思われます。


◎光復節慶祝式で動員されるミュージカル俳優・元スポーツ選手


大統領祝辞に引き続き、特別短編ミュージカル上演と万歳三唱が行われました。
ミュージカルは、韓国最高峰の理系大学であるKAISTの一チームが開発したというヒューマノイドロボット「ヒュボ(휴보)」を基にし、愛国心を掻き立てるような内容でした。


ここで気になったのは、本来個々の内なる感情の表現者であるミュージカル俳優や、個々の努力の研鑽を披露する元スポーツ選手・技能オリンピック選手(万歳三唱)まで政府主催の式典に駆り出されていたことでした。
光復節が日本からの植民地解放を記念する、大韓民国にとって特別な日であることは承知しつつも、個々の思考や努力が身上である彼らが動員されてしまうことに、行き過ぎた国家全体主義の気味の悪さを感じずにはいられませんでした
ただ正直こういったことはどの国でも程度の差はあれ変わらないかもしれませんが。


光復節慶祝式での特別短編ミュージカルに出演するミュージカル俳優親子


KAISTの一チームが開発したというヒューマノイドロボット「ヒュボ(휴보)」を基に愛国心なるものを掻き立てようという題材のようです。


「光復節の歌」斉唱





万歳三唱で登壇に立つオリンピックメダリストと技能オリンピック優勝者


◎駐大韓民国日本大使館周辺


夕方遅くに駐大韓民国日本大使館周辺に初めて行ってみました。
現在大使館は建て替え工事中ですが、警官と警護車両で、警備の厳しさが伝わってきました。
建て替え中の大使館の向かい側には少女像が建っています。
毎週水曜日に慰安婦問題に関する抗議集会が行われますが、今日は月曜日だったためか、訪れている人数人程でした。


駐韓国日本大使館は現在建て替え工事中。
警護車両が沢山。


日本大使館の向かい側に作られた少女像


「日本軍慰安婦問題はまだ解決していない。
被害者が望まない早期妥結は拒否する!
軍国主義復活を目的とした中身のない慰安婦問題談合を撤回しろ!」


英語やフランス語でも抗議が書かれています。


◎光化門広場周辺


光化門広場(광화문광장、クァンファムンクァンジャン)周辺では特別な太極旗を複数見かけました。


政府ソウル庁舎(정부서울청사)に掲げられた太極旗


光化門広場に作られた、花で出来た極旗


極旗や、日本植民地時代の独立運動家たちのパネルを持って歩く韓国中学生?


◎夜のソウル広場でコンサート


ソウル特別市庁の前にあるソウル広場(서울광장、ソウルクァンジャン)では、ソウル市立交響楽団(서울시립교향악단)による無料公演が行われていました。
光復節に合わせて毎年行っているようです。


マックス・ブルッフ作バイオリン協奏曲第1番を演奏するバイオリニストのキム・ジュヨン(김주연)とソウル市立交響楽団


ソウル市立交響楽団による大韓民国国歌「愛国歌」



景福宮興礼門を照らした「メディアファサード」


景福宮(경복궁、キョンボックン)の中門である興礼門(흥례문、フンニェムン)では、文化財庁(문화재청、日本の文化庁に相当)が旗振り役となって、大韓民国の歴史や文化を表現したというイルミネーション「メディアファサード(미디어파사드)」の披露が行われました。
景福宮は李氏朝鮮時代の宮殿という非常に貴重なものでありながら、それを傷つけかねないイベントを行うのはどうかとも思いますが、光復節という名の下やりきってしまうのが韓国らしいと言えるのかもしれません。


※参考リンク
2016年8月9日付聯合ニュース 「景福宮興礼門ではメディアファサード、国立ハングル博物館では特別解説(韓国語)」


景福宮興礼門で行われたイルミネーションイベント「メディアファサード」


◎まとめ


大韓民国で韓国語を勉強している日本人として、光復節の日にソウルにいた感想としては、一言では表せない非常に複雑なものです。
一方で、日韓関係の中で無視できないものであることもまた事実ではありますので、旧従属国の国にとって、戦争とは如何なるものだったのかを考える良い機会になったと思います。

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