2016年4月13日(水)、韓国では第20代国会議員選出選挙が行われます。
これに先立ち、主な韓国の政党の現況をお伝えしようと思います。
◎韓国の国会議員選出方法
韓国の国会は一院制300議席で、4年毎に選挙が行われます。
選挙方式は日本と同様に小選挙区(韓国では地域区と呼ぶ)・比例代表並立制ですが、比例代表での議席数獲得においては、政党得票率が3%以上若しくは小選挙区で5議席以上獲得しないと、比例代表で議席を獲得することができません。
地域区246議席・比例代表54議席を争います。
因みに、選挙が行われる4月13日は公休日となります。
◎候補者を擁立している、主な韓国の政党
○セヌリ党(새누리당)
朴槿恵(박근혜、パク・クネ)現大統領の出身政党で、現政権を担当している与党。
経済政策としては小さな政府、北朝鮮に対しては強硬姿勢を基本としています。
現在の議席数は145議席。
党代表(日本の政党での幹事長に相当)は金武星(김무성、キム・ムソン)議員。
代表的な党内勢力としては、朴現大統領に近い親朴界(친박계)、李明博(이명박、イ・ミョンバク)前大統領に近い親李界(친이계)、劉承旼(유승민、ユ・スンミン)元党代表に近い親劉界(친유계)、現党代表の金武星議員に近い金武星界(김무성계)があるそうです。
今回の選挙の候補者擁立に当たっては、親朴界の李漢久(이한구、イ・ハング)議員が、党公認候補者を決める公職者候補推薦管理委員会(공직자후보추천관리위원회)の委員長を務めたためか、多くの親朴界議員が候補者として擁立された一方、現職議員にもかかわらず党公認漏れとなった親李界・親劉界議員の多くはセヌリ党を離党して無所属で出馬し、その中の一部には、当選したらセヌリ党に復党したい意思を持っているようです。
劉承旼議員自身も、セヌリ党としての公認を得られなかったことから、無所属出馬し、「私の家である党から暫くの間抜けるということなのだから、当選となったら直ぐにセヌリ党に復党する」と語っていますが、親朴界であるセヌリ党元裕哲(원유철)院内代表(日本の政党での国会対策委員長に相当)は「当選後のセヌリ党復党は不可能だ」と拒否反応を示しています。
参考リンク
2016年3月16日付アジア経済新聞 親劉承旼・親李公認漏れ 金武星界生存 非朴界も運命分かれる
2016年3月27日付毎日経済新聞 劉承旼「当選時復党」 元裕哲「セヌリ党復党不可」(韓国語)
○共に民主党(더불어민주당)
金大中(김대중、キム・デジュン)・盧武鉉(노무현、ノ・ムヒョン)元大統領時に政権を担当した政党を源流とする、韓国の最大野党。
経済政策としては大きな政府、北朝鮮に対しては穏健姿勢を基本としています。
現在の議席数は103議席。
党代表は金鍾仁(김종인、キム・ジョンイン)議員。
代表的な党内勢力としては、盧武鉉政権時代に大統領秘書室長を務め、前回大統領選挙立候補者である文在寅(문재인、ムン・ジェイン)議員に近い親文界(친문계)、金鍾仁(김종인)議員に近い金鍾仁グループ(김종인그룹)、党代表経験のある孫鶴圭(손학규、ソン・ハッキュ)議員に近い孫鶴圭界(손학규계))、同じく党代表経験のある丁世均(정세균、チョン・セギュン)議員に近いSK界(SK계)があるそうです。
参考リンク
2016年3月28日付アジア経済新聞 【与野党新界派出現】親文在寅・金鍾仁グループ浮上(韓国語)
今回の選挙に当たっては、比例代表名簿の順序決定の際、2016年1月に党代表に就任したばかりの金鍾仁議員が、党代表という非常に知名度の高い職位にあるにもかかわらず、小選挙区から出馬せず比例代表名簿で当選安全圏である順位2番目を受けたことに対して、党内から反発の声が高まり、金鍾仁議員の党代表辞任騒動にまで発展しましたが、金鍾仁議員自身が「党代表職に留まる」と発言して、騒動は一時的に収束していますが、選挙の結果次第では、葛藤の再燃が予想されます。
ちなみに金鍾仁議員はこれまで5期の国会議員歴がありますが、いずれも比例代表での当選です。
参考リンク
2016年3月21日付中央日報 金鍾仁「比例2番セルフ公認」固守した背景は?(韓国語)
2016年3月23日付聯合ニュース 金鍾仁「苦悩の末党残留」代表職維持・比例代表名簿2番確定(韓国語)
○国民の党(국민의당)
共に民主党から離党した勢力が、2015年12月に新たに結党した政党。
共に民主党から離党したばかりということで、経済政策としては大きな政府、北朝鮮に対しては穏健姿勢という基本姿勢は共に民主党と変わりませんが、差別化を図る目的か、経済政策の核として新成長産業の育成と集中投資を謳っています。
現在の議席数は21議席。
共に民主党の源流である党で代表経験のある安哲秀(안철수、アン・チョルス)議員と千正培(천정배、チョン・チョンベ)議員が、常任共同代表を務めます。
安哲秀議員は、前回大統領選挙で野党候補として立候補の意思がありながらも、最終的には文在寅議員に譲った人物です。
今回の選挙に当たっては、国民の党独自の力でもある程度の議席を確保できるとする安哲秀代表と、共に民主党から離党したとは言え、今の党の力だけではセヌリ党の勢力拡大阻止に不十分で、選挙協力に当たっては共に民主党との協力も厭わない立場の、同じく共に民主党の源流である党で代表経験のある金漢吉(김한길、キム・ハンギル)議員との間に温度差があり、国民の党が今回の選挙結果を受けてどのような政治戦略を取るかが注目されます。
参考リンク
2016年4月1日付京郷新聞 金漢吉「安哲秀は選挙協力なくても首都圏多数当選確信、しかし野党指導部と会わなければ」(韓国語)
○正義党(정의당)
2012年に結党された政党。
現在の議席数は5議席。
政治・経済に関連した様々な既得権の廃止、非正規社員制限・解雇規制・労働時間短縮・性別格差解消等、弱い立場にある労働者の寄り添った政策を掲げています。
党代表は沈相奵(심상정、シム・サンジョン)議員。
◎注目選挙区
○ソウル鍾路
「政治の一番地」との異名を持つソウル特別市(서울특별시)鍾路区(종로구、ジョンノグ)の選挙区。
前ソウル特別市長の呉世勲(오세훈、オ・セフン)セヌリ党公認候補者と、党代表経験のある丁世均共に民主党公認候補者の直接対決として注目されています。
○ソウル蘆原丙
ソウル特別市蘆原区(노원구、ノウォング)の一部を対象とした選挙区(韓国の小選挙区において、同地区に複数ある場合は、甲・乙・丙の順に表記)。
安哲秀国民の党公認候補者が、李俊錫(이준석、イ・ジュンソク)セヌリ党公認候補者や黃昶樺(황창화、ファン・チャンファ)共に民主党公認候補者等と対決。
○ソウル龍山
ソウル特別市鍾路区(용산구、ヨンサング)の選挙区。
朴槿恵政権で保険福祉部長官(長官は日本省庁の大臣に相当)を務めた経験がありながら公認候補から漏れたことに反発してセヌリ党を離党した陳永(진영、チン・ヨン)共に民主党公認候補者と、黄椿子(황춘자、ファン・チュンジャ)セヌリ党公認候補者の対決。
○世宗
世宗特別自治市(세종특별자치시)の選挙区。
盧武鉉政権時に国務総理(日本での首相に相当)を務めた経験のあるベテランの李海瓚(이해찬、イ・ヘチャン)議員が、共に民主党の公認漏れに反発して離党し、無所属として出馬。
◎おまけ:韓国での選挙関連の写真
僕が住んでいる地域が含まれる、ソウル特別市城北区選挙区の候補者ポスター。 |
韓国の選挙カーは、日本のように走り回りながら支持を訴えることはせず、地下鉄駅等の人が集まるところに止まって、応援ソングを流したり遊説するのが一般的。
韓国では、日本のように公示期間中ずっと期日前投票できるわけではなく、選挙日前最後の金曜日・土曜日の2日間のみ「事前投票」と呼ばれる形で投票ができました。 広告塔は、女性9人組アイドルグループAOAのソルヒョン(설현)。 |
◎まとめ
2015年12月に結党したばかりの国民の党は、議席獲得目標を40議席としていますが、個人的には、野党分裂となった共に民主党と国民の党がどのような割合で議席を獲得するのかに注目しています。
今回の日記を基に、選挙結果についても書きたいと思っています。
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