ad1

2016/02/21

欧州のシェンゲン協定が存続の危機に?‐ドイツ放送局のニュースから

欧州内の政策として特筆すべきものの一つであるシェンゲン協定(Schengen Agreement)。
そのシェンゲン協定が存続の危機に瀕しているというドイツ放送局発ニュースに接しましたので、そのニュースの内容を紹介したいと思います。
引用元はドイツ国際放送局ドイッチェ・ヴェッレ(Deutsche Welle、ドイツ語で「ドイツの波」という意味)Youtube公式チャンネルの動画ニュースからです。


◎シェンゲン協定とは?


シェンゲン協定とは、批准国間の出入国審査を省くことで人々の移動の自由を保障し、また短期間滞在ビザ・難民申請・国境管理が批准国間共通の規則・手続きによって行われるよう規定した協定のことです。


シェンゲン協定批准国内で求められる主要規則は以下の6つです。

同協定批准国内の出入国審査撤廃
同協定批准国外からの人々の出入国の共通規則導入
短期間滞在ビザ関する必要条件又は規則の一致
各国間警察の協力体制強化
各国間法的協力強化
シェンゲン情報システム(SIS, Schengen Information System)の設置と発展


1985年ルクセンブルクのシェンゲンという町にてフランス・(当時西)ドイツ・ベルギー・ルクセンブルク・オランダが最初にこの協定に合意、その後順次批准国が増加して、2016年2月現在では計26ヶ国がこの協定に批准しています。

批准国(アルファベット順)
オーストリア・ベルギー・ブリガリア・キプロス・チェコ・デンマーク・エストニア・フィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイスランド・イタリア・ラトビア・リヒテンシュタイン・リトアニア・ルクセンブルク・オランダ・ノルウェー・ポーランド・スロベニア・スロバキア・スペイン・スウェーデン・スイス

※参考リンク
シェンゲン圏及び協力状況(The Schengen area and cooperation)


◎シェンゲン協定が崩れかかっている!


ところが、このシェンゲン協定に崩壊の危機が訪れていると言います。
ドイッチェ・ヴェッレの経済ニュースでは以下のような分析がなされています。




Aufgrund des Flüchtlingsandrangs geriet das Schengen-Abkommen allerdings ins Wanken.
Die Europäer fühlen sich überfordert.
Es gibt Streit um die Flüchtlingspolitik.
An einzelen Grenzen wird bereits wieder kontrolliert und so den Flüchtlingsandrang einzudämmen.
Bald womöglich sogar wieder flächendeckend.
Das wäre das Ende von Schengen.
難民の流入急増で、シェンゲン協定が揺れています。
批准各国は手におえないと感じています。
幾つかの国境で既に管理が始まり、難民の流入を防いでいます。
これから更に多くの国境でこのようなことが起こると見られます。
そうなればシェンゲン協定の終焉といえるでしょう。

Darunter würde besonders Europas Industrieleine.
Sie hat sich auf einen ungehinderten Warenverkehr eingestellt.
Voraussetzung für die sogenatte just-in-time-Produktion.
Beispiel Volkswagen, Motoren kommen aus Ungarn und werden zu festgelegten Zeiten ans Band in Deutschland geliefert.
Teure Lagerhaltung ist überflußig.
Grenzkontrollen und Staus würden das eingespielte System ins Wanken bringen und viel Geld kosten.
そうなることで特に影響を受けるのが欧州産業界です。
産業界では滞りのない商品流通システムを整えています。
所謂「ジャストインタイム生産」の前提条件です。
フォルクスワーゲン社を例に説明しましょう。
モーターはハンガリーにある工場で生産され、適正な時間にドイツの組立工場に運ばれます。
高い在庫代を払うことに意味がないからです。
しかし、国境管理や国境付近での渋滞によって、このシステムが機能しなくなり、余計なコストが掛かるかもしれません。

Ist in einem Europa mit Grenzkontrollen eine gemeinsame Währung noch sinvoll, das Frage sich die Experten.
Für die Europäer könnte mit dem Ende von Schengen eine Entwicklung losgetreten werden, an dere Ende der ganz große Traum von einem Vereinten Europa plazten könnte.
国境管理が再開されることで、欧州内単一通貨が意味を成すのかについても、専門家は疑問を呈しています。
シェンゲン協定が終わりを告げることによって、統一欧州の大きな夢だった単一通貨制度も崩れるかもしれません。


欧州内で一番好調な経済状況となっているドイツですが、その大きな要因の一つとして、工場の他の欧州の国への移転があるとするのならば、特に自動車産業が盛んなドイツとしては、シェンゲン協定の崩壊は非常に大きな痛手となり得ます。
(自動車産業に関しては、少なくとも欧州で展開するアジアの自動車会社についても同じことがいえるのですが。)


◎シェンゲン協定崩壊危機の主な要因である難民急増への対策は?


今回シェンゲン協定が崩壊の危機に立たされている主な理由として、欧州への難民申請者の急増が挙げられるわけですが、それへの対策として現在オーストリアやハンガリーや行われている国境管理強化で、果たしてそれだけで難民申請者の数は防げるでしょうか。
僕はそれだけでは絶対に防げないと思います。
なぜなら、難民申請者の増加は、彼らの故郷である中東の政情不安定又はバルカン半島地域の経済状況が困難であることに起因しているため、これらへの根本的対策が行われない限りは、難民申請者の数は減らないからです。
そのため、難民申請者を制限したいのであれば、国境管理強化をむやみに行うのではなく、シェンゲン協定批准各国のみならず、中東・バルカン半島各国も含めての協議・対策作りが求められるのではないのでしょうか。


シェンゲン協定批准各国が約20年間続けてきた政策に関して、継続させるのか否か、注目が集まるところです。

0 件のコメント:

コメントを投稿