2016年に入り、北朝鮮による水爆実験やミサイル発射が相次いでいる中、韓国の与党であるセヌリ党(새누리당)内に核武装論が浮上してきているようです。
◎韓国与党院内代表が「核武装論」を提議
2016年2月15日、韓国国会で、元裕哲(원유철、ウォン・ユチョル)セヌリ党院内代表(日本国会の国会対策委員長に相当)が次のように発言したことで、韓国政界で波紋が広がっています。
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「核武装論」を持ち出したセヌリ党元裕哲院内代表 核拡散防止条約(NPT)は?‐2016年2月15日SBSニュース(韓国語)
북한은 끝내 우리를 외면했습니다.
우리가 건넨 '화홰와 협력의 손길'을 '무력도발이라는 주먹질'로 응답하였습니다.
국제사회와 함께 북한의 비핵화를 이끌어내고자 많은 노력을 했지만 그 결과는 네 차례의 핵실험이었습니다.
北朝鮮はとうとう我が国を無視しました。
我が国が差し出した「和解と協力の手」を「武力挑発という名の拳」と応酬しました。
国際社会と共に北朝鮮を非核化に導こうと多くの努力をしましたが、その結果は4回目の核実験でした。
우리도 이제 특단의 조치를 취해야 합니다.
1992년 한반도 비핵화 선언으로 철수한 미국의 전술핵 재배치나 우리도 핵을 갖되 북한이 핵을 포기하면 우리도 동시에 핵을 폐기하는 방안등 이제는 자위권 차원의 효과적이고 실질적인 대북 억제수단을 진지하게 재검토하여야 할 시점이 왔다고 봅니다.
한반도 비핵화 선언은 북한의 네 차례 핵실험으로 무의미화해졌습니다.
我が国も特別の処置を取らなければなりません。
1992年朝鮮半島非核化宣言で撤収したアメリカの戦術核兵器の再配置や、我が国も核を持つものの、北朝鮮が核を放棄すれば我が国も同時に廃棄する法案等、自衛権次元で効果的かつ実質的な対北抑制手段を真面目に再検討するべき時が来たと考えます。
朝鮮半島非核化宣言は北朝鮮の4回目核実験で意味をなさなくなったのです。
北朝鮮が核実験をしたからって韓国も核を持って良い、という論理はあまりにも飛躍しすぎると思いますし、そもそも、何故1回目の核実験だけでは非核化宣言が無意味とならなかったのか、という突っ込みどころもありますが(苦笑)、いずれにしても、与党の執行部を務める議員から公然と核武装論が飛び出すことは、数年前まではあまり考えられなかったことです。
◎KBS解説委員が核武装論発言を批判
セヌリ党院内代表の核武装論発言に対して、韓国公共放送局KBSのパク・ウンギ解説委員が、洪容杓(ホン・ヨンピョ)統一部(部は日本の省に相当)長官(長官は日本の大臣に相当)の開城工業団地賃金の核開発資金への流用に関する発言と合わせて、次のように批判しました。
尚、パク・ウンギ解説委員は、1985年にKBSに入局して以来、政治部・社会部記者、政治部次長、統一部次長、バンコク支局特派員、解説委員室記者、秘書室長の経歴を持つ、「KBSの重鎮」とも言える存在のようです。
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【ニュース解説】国論の結集は信頼が第一‐2016年2月18日KBSニュース(韓国語)
핵무장론은 우리 정부가 지금까지 유지해왔던 비핵화 원칙의 근간을 흔드는 매우 중요한 내용입니다. 이렇게 중요한 원칙을 집권 여당의 원내대표가 공론화를 꺼내들고 나왔을 때는 어느 정도 내부 논의가 있었던 게 아닌가 국민들은 생각합니다. 그러나 김무성 당 대표는 즉각 개인 의견일 뿐이라고 일축했고 한민구 국방장관도 고려하지 않고 있다고 밝혔습니다.
核武装論は政府がこれまで維持してきた非核化原則の根幹を揺るがす非常に重要な内容です。このような重要な原則に対する提議を与党の院内代表が持ち出してきたということは、どれほど党内での論議が尽くされたのかと国民は考えます。しかし、金武星(김무성、キム・ムソン)セヌリ党代表は即刻、個人の見解に留まると一蹴し、韓民求(한민구、ハン・ミング)国防部(日本の防衛省に相当)長官も、考慮していないと明かしました。
핵은 우리가 갖고 싶다고 가질 수 있는 것이 아니라는 사실을 원 원내대표도 모르지 않을 것입니다. 집권당 원내대표의 느닷없는 핵무장론에 국민들은 당혹스러워합니다.
核は我が国が持ちたいと思って持てるものではないということを、元院内代表は知らないということでしょう。与党の院内代表の突然の核武装論に、国民は戸惑っています。
국론을 결집하려면 신뢰가 밑받침이 돼야 합니다. 더구나 국가 안위가 달려있는 안보정책입니다. 집권세력 내부에서조차 한목소리가 나오지 않는다면 국민들의 신뢰는 약해질 것입니다. 주요 정책을 책임지고 커다란 영향력을 행사하는 위치에 있는 인사일수록 더욱 언행에 신중을 기해야 할 것입니다.
国論を結集しようとするなら信頼が第一です。加えて国家の安全保障がかかっている政策です。執行勢力内部でさえ統一した見解が出ないのなら、国民の信頼が弱まります。重要政策に責任を持ち、大きな影響力を行使すべき地位である以上、もっと発言に気を使わなければなりません。
ここで気になるのは、核武装論の批判の対象が、核兵器を持つこと自体の危険性ではなく、安保政策で与党・政府間での統一見解がなされていないことに対するものだ、ということです。
解説委員の「核は我が国が持ちたいと思って持てるものではない」という発言から、北朝鮮対策として核兵器を持っておきたい(が、今の国際事情を鑑みる限りそのようなことはするべきではない)、というのが本音だということが推測できます。
◎核武装論は韓国で広がるのか?
個人的には、朴槿恵(박근혜、パク・クネ)政権である限りは核武装論は広まることはないとみます。
それは急速に経済・政治的繋がりが深まっている中国の存在があるためです。
韓国において中国との貿易額は今や断然の1位であり、2015年9月3日に中国の首都北京で行われた中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典に朴大統領が参加したほど外交関係も緊密になってきた中韓関係を見る限り、こういった状況の中で核武装論が高まれば、流石に中国も黙ってみてられないのではないか、と思います。
ただ、平和な世界を保つためには、こういった武力に関する話ではなく、対話・交渉で解決するべきではないか、と思いますが(勿論交渉にも色々な思惑が絡むことは不可避であることは承知しつつも)。
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