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2016/01/09

日本企業がテレビCMでタレントを起用することについて

先ごろ日本において、様々な番組の司会等で人気のベッキーさんの不倫関係が話題になっているようです。
この不倫関係騒動を機に、ベッキーさんとCM契約していた企業の内数社が、CM契約の見直しを検討しているようです。


参考記事
2016年1月7日付日刊スポーツ「CM10社ベッキー不倫報道で清純イメージ痛恨極み」


今回は、日本企業がテレビCMでタレントを起用することについて考えたいと思います。


◎日本・韓国はタレントを起用するテレビCMが非常に多い


昨年のベルリン留学や、現在のソウル留学を経験している中で、ドイツや韓国のテレビを見ることがしばしばありますが、その中で思うのは、日本・韓国はタレントを起用するCMが非常に多いということです。
とりわけ日本はそういった例が顕著だと感じています。
以下に主な業種別テレビCMを、日本・韓国・ドイツに分けて、あくまで僕の見てきた経験に基づくものではありますが、タレント起用有無について比較表を作成してみました。
 
  飲食品 自動車 家電 洗剤 スーパー 携帯通信 金融 航空
日本
韓国
ドイツ × × × × × × × ×









ご覧の通り、日本には全て○が付く結果になりました。
韓国にも全て○が付いていますが、自動車については、日本よりもタレントを起用する例が極端に少ない印象です。
これらと反対の結果となったのがドイツ。
全ての項目に×が付いています。
補足すると、これが有名人となると、ドイツでも飲食品・スーパー・金融に○が付くのですが、どちらもドイツ代表サッカー選手がCMに出演している形になります。


韓国での自動車テレビCMの典型例:起亜自動車(기아자동차)K5


ドイツで数少ない有名人のテレビCM起用例:ドイツ大手スーパーREWEにドイツサッカー代表トーマス・ミュラー(Thomas Müller)選手が出演。


◎なぜ日本の企業はCMにタレントを起用したがるのか?


なぜこれ程までにも日本の企業はCMにタレントを起用しようとするのでしょうか。
株式会社デルフィスとCM総合研究所が共同で行った検証結果報告ファイルの中では、以下2つを挙げています。


1.視聴者の印象に残すための手段
2.効率的なCM好感度の獲得


タレント起用CMはそうでないCMより好感度を獲得できる割合が高く、しかも、はるかに少ない回数で好感度を獲得できるそうです。


詳細については、下記リンクをご覧ください。
タレントの効果的な活用方法 - CM 総合研究所


また、効率的な日本語の勉強をシェアしている、恐らくアメリカ人と思われるクレイトン・マックナイトさん(Clayton Macknight)という人が、日本のテレビCMの印象について書いているのですが、そこから印象的な部分を、日本での紹介記事中の日本語訳と共に引用します。


In my opinion, people in Japan are a lot more interested in other people, especially people they ‘know’. By ‘know’ I mean, they have seen them a lot on TV or around. People will generally connect with the celebrity because they see something of themselves in that character. Somebody they want to be.
It’s like the commercial is asking “Are you this kind of person?” then buy this.
「おそらく、日本人は他人への関心がアメリカ人よりも強いのではないだろうか。そしてその”他人”とは、自分の知っている人のこと。テレビや雑誌などで何度も見たことがある人に強い関心があるように思える。一般的に、日本では芸能人やタレントに自分と似た部分を重ね、自己投影しているのではないだろうか。芸能人は日本人にとっての憧れであると同時に、自分そのものなのだ。
だから、日本のCMはこう語りかける。“あなたはこんなタイプの人間ですか?だったら、これを買ってください“と。

Whereas the commercials in the States (and for a lot of the Western world), the focus is more on what the advantage is to you the consumer. You get no calories and great taste. You save money and look great etc…
反対に、アメリカのCMではその商品が‟あなたに”どんなに良い効果をもたらすかを強調する。カロリーゼロなのにおいしい!とか、節約しつつも美しくなれる!とか。

Commercials tend to show what triggers somebody into action, what motivates them. 
In Japan, it seems more like people are the stars, while in the States, it is more about appealing to how useful the product is to the viewer.
日本では好感をもたれている芸能人を起用すること、アメリカではその商品がどれだけ役に立つものかを説明することが、消費者の購買意欲につながるようだ。


検証結果と記事を纏めるならば、日本人は芸能人が憧れの存在であり、彼らが身に付けたり持っていたりするものを自分も欲しくなる傾向があるため、芸能人をCMに起用することで、消費者に商品を買ってもらえる割合が高くなる、と言えるかと思います。


※参考記事
JLPT BC 117 | What Japanese TV Commercials say about Culture
※日本での紹介記事
【外国人の疑問】どうして日本のテレビCMは芸能人を起用するの?|マダムリリー


◎テレビCMのタレント起用は、商品の特性を説明できないことの表れ?


日本においてテレビCMにタレントを起用することで、商品を買ってもらいやすくなる、ということはわかりました。
しかし、商品の良し悪しはタレントではなく消費者によって決まることであり、それならば商品自体をアピールするCMでなければならないはずです。
そういうことをせず、いくら効率的に好感度を獲得できるからといってテレビCMにタレントを起用するというのは、商品自体が競合他社の商品と違ってどういう特性を持っているのかという説明を避けてしまっている、いささか安易な方法と言えるのではないでしょうか。
結果を早く求められるからテレビCMにタレントを起用する、というのもあるかもしれませんが、程度の差はあれど、結果を早く求められるのはどの国の企業であっても変わません。
日本企業は、商品を使用することでどのようなメリットがあるのかを説明する必要があるのではないか、そして、消費者もテレビCMにタレントが出演しているかいないかにかかわらず、どの商品が自分にとって良いものなのかをしっかり吟味する必要があるのではないか、と思います。


かくいう僕は昨年まで6年間某自動車会社に勤務していましたが、僕が入社した頃から2、3年間は、テレビCMにタレントを殆ど起用しておらず、テレビCMにタレントを多く起用していた競合他社と比較して、「何故うちの会社はタレントを起用しないのだろう」と思っていました(苦笑)
しかし、退職後に海外での生活経験を経てきた上で、このような考えに至っています。
皆さんは、テレビCMのタレント起用についてどうお考えでしょうか?

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